混乱してきた。


あたしの前に座っている人は一体誰なのか―――



ああ、そうか…


もともと戦争を起こさないように両者の橋渡し役として、あたしたちの婚姻が契約されたわけで。


最初からそこに愛があったわけじゃなかったんだ。


けど



信じてたんだよ、あたしは―――




雪斗とは違う―――って


だけど戒にも


雪斗と同じ性質のものが心の奥底で眠っていたんだ。


それは残忍で、冷たい―――





「じゃぁお前は考えたことがあるのかよ…」


心臓に手を当てたままぎゅっと手を握りあたしは戒を睨み上げた。





「……」


戒が目を細めて無言で「何を?」と聞いてくる。


「お前は考えたことがあるんかよ!


小さな子が…



これからたくさんの可能性を、未来を持ってる子が


心に癒えない傷を背負うっていう本当の意味を―――」




お前は分かっているのか。




最後の言葉は驚くほど冷静だった。


戒が細めた目をゆっくりと開く。