な、何が言いたいんだよ…


「‟狼”は群れで行動する。


現にあいつにはおだやかじゃない‟オトモダチ”がたくさん居るみてぇだしな。


俺が急性胃炎で入院したときに襲ってきた連中がいい例だ。


同じタトゥーがタイガにあったからな。間違いねぇだろ。



けれど―――虎はその狼の群れでさえ狩ることができる。




そのときの方法は分かるか?」




急に聞かれてあたしは戸惑った。





「簡単なことだ。






弱い子供の狼から狙う」





淡々と温度のない声で言われてあたしは目を開くしかできなかった。


いっそさっきみたいに怒鳴ってくれたらよかったのに。そしたらあたしだって勢いで言い返すことができた。


けれど


その静かすぎるほどの冷酷さが、こいつの中で眠ってて…


あたしは勘違いしていた。


戒の本質は基本的に変わっていなかった―――のではなく、その奥深くに眠るもっともっと残酷な本質を


見抜けなかったのだ、あたしは。


虎の鬣(タテガミ)を捻るってことわざがあるけど、それは龍の「逆鱗に触れる」と同じぐらい怖い意味合いがあって。


戒の中を占めるのは今燃えたぎるような怒りで―――


どうして戒をそこまで追い立てるのか、



あたしには分からなかった。






でも…



でもさ、戒―――


どうしてそんな風に考えるんだよ。





お前は本当は優しくて人の痛みを思いやって受け入れてくれるヤツなんだよ。






どうして