戒の冷静な口調に苛立ちが募った。


「だからって何でもしていいわけじゃねぇよ!」


あたしが戒の胸倉を掴んだままもう一度激しく揺すると





「きれいごと抜かしてんじゃねぇ!!



相手を誰だと思ってやがる!





世界一の殺し屋だ!一歩でも何かが間違ったら、俺たち全員が死ぬ羽目になるんだよ!」




戒の怒声が響いて、淡い色のカーテンが揺れた。


あたしは


こんな風に目を険しくさせて、威圧的な戒を見たのは初めてだ…


ううん、最初軟弱メガネと出会ったときも何か得たい知れない怖さはあったし、その後虎間と拳を交わしたときだって、こいつの強さをまざまざと見せつけられて何だか怖かった。


けれど


その後あたしは戒の優しさに触れて、楽しい日々を過ごしているうちにその感覚を忘れつつあった


―――けど


戒の本質はやっぱり変わらなくて……ううん、戒は何一つ変わってない。


変わったのはあたし―――


あたしが戒を好きになって、こいつの嫌な部分から目を逸らそうとしていた


ぬるい自分。




でも


今回はぬるま湯に浸っているわけにはいかない。