「…俺だ、朔羅も居る。どうした?何か問題が?」


叔父貴は痛むのだろうか腰を押さえながらも極力普通を装って電話に出る。



「―――…何!?姐さんたちのフロアのガードマンたちが…??


―――すぐ向かう。―――…いや、彼らに何かあったら大変だ。責任があるからな。


必ず向かう」


叔父貴は早口に言って受話器を置くと、


「悪いが、少しだけ席をはずす。すぐ戻ってくるから……


お前は心配するな」


叔父貴はテーブルに置いたハジキをスーツパンツにねじ込み、上着を翻した。


「そんな様子で大丈夫なんかよ……」


「何…ちょっとしたアクシデントだ。状況を確認しだい戻ってくるからお前はここで待ってろ。


ここは一番安全な場所だ」


叔父貴はなんでもないように言いながら上着に袖を通す。


「そうじゃなくって…叔父貴が!」


言いかけると、


「心配することない。お前は待っていてくれ」


叔父貴は寂しそうに笑って扉の向こう側に消えた。


どうすれば―――…


一瞬ものすごく不安になったけれど、あたしは慌てて振り返った。


叔父貴の容態も気になるが―――パソコンの情報を手に入れるのはこの瞬間しかない!


あたしはきっちりドアが閉まるのを見届けて、


「姐さんたちのフロアのガードマンが襲われたようだ。やったのはお前か?」


あたしは戒に伝えながらも慌ててベッドに移動するとパソコンの蓋を開けてマイクロチップを言われた場所に挿入した。


『違う、俺らじゃない』


「でもチャンスだ。戒!ダウンロードをはじめる!」


『朔羅!何が起こってるのか分からへん。


作戦は中止や』


戒からそう言われたけど、もうダウンロードははじまろうとしている。