叔父貴とのキスは―――


味わったことのない複雑な苦味と酸味がして、あたしは唇を塞がれて思わず顔をしかめた。


叔父貴がちょっと前に飲んでいたウィスキーだかブランデーだかの味だろうか。



触れるだけの優しいキス―――


びっくりし過ぎて目を閉じることもなく、叔父貴の唇はすぐに離れていった。




『朔羅!どうした!?何があった―――!!』




戒の怒鳴り声が聞こえてきて、いつかの光景を思い出す。


そう…あれは―――



叔父貴のお部屋に監禁されてたときだった。


あのとき戒とは電話で話していて。


叔父貴は戒を挑発する意味もあって…


思えば叔父貴が少しずつ変ったのはあの頃だった…


でも今、叔父貴はまさかあたしと戒、キョウスケ三人が無線で繋がってることを知らない。




唇が離れると、叔父貴は苦しそうに眉根を寄せて




「お前は俺の部下じゃない。




俺はお前の―――…」




言いかけて叔父貴は


「……っく…」


急に苦しそうに顔を歪めてあたしから顔をそらした。


「っつ!……っく…!」


腰を押さえて苦しそうに呻き、肩で荒く息をしてる。


何で!?さっきまで普通だったのに!


尋常じゃない叔父貴の姿を見て、あたしは慌てて叔父貴の両肩に手をやった。


「ど…どーしたの!腰が痛いのか!」


「……いや…大丈夫だ…ただの腰痛だ…このところ無理してたから…」


大丈夫だ、と言ったケド、叔父貴の痛がりようは演技に見えなかったし、顔色は真っ青。額に脂汗が浮いてる。


『腰痛…!?朔羅、作戦は中止だ。


今すぐ鴇田を呼べ』


戒の指示が来て、あたしは耳を押さえながらも慌てて立ち上がった。


「どこへ行く……」


その手を叔父貴が止める。


「どこって…鴇田に連絡!」


部屋の内線電話を目配せするも


「……大丈夫だ、ただの腰痛だ。こんなこと知られたらかっこ悪くてあいつにバカにされる…」


切れ切れに言って叔父貴は無理やり苦笑い。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」


あたしは叔父貴の手を振り切って内線電話に駆け寄った。


そのときだった。


タイミングを見計らって部屋の電話が鳴る。


TRRRR


「はい!」


慌てて電話を取ると相手は鴇田だった。


『お嬢?会長はそちらにいらっしゃいますか?』


「ちょうど良かった!おめぇに…」


言いかけたとき、叔父貴が受話器を奪った。