それからも…


鴇田はアルコールを入れても始終ペースを崩さず、いつもの無口な様子で黙々と食事を摂っていたし、


代わりにキリさんがあたしとドクターに気を遣ってあれこれ話題を振ってくれる。


あたしはその質問に当たり障りのない無難な返事を返し


何杯目かのグラスを空にしたときに席を立った。


「少し酔ったみたい…お庭を散歩してきてもいい?」


甘えるように鴇田に聞くと、


「ああ、気をつけろよ」と、だけ返事。


「私も行こう。外の風に当たりたかったんだ」


ドクターも席を立ちあがりあたしたちは二人で席を外した。


正直…何でついてくるのよ…とちょっと思ったけど、別にドクターなんて居ても居なくても一緒だし。


空気みたいなもんよ。


あたしは気にせずに店員に案内されて庭に出ると、プールサイドを歩いた。


赤い薔薇の花びらが上品に散ったプールサイドを歩いていると







「つまらない、って顔してますよ」






背後をついてきたドクターが声を掛けてきた。


あたしは顔だけを振り返らせて


「そう見える?」と眉をしかめた。


「そう見えます。それともフリなのかな。君は女優だし」


「フリ……じゃないわよ」


言って後悔した。


こんなの…我侭じゃない。


新しい義母を受け入れられなくて、駄々こねてる小娘みたい。





鴇田が誰と結婚しようとあたしには関係ないってのに。



あたしに父親なんて居ないってのに―――