ババ抜きはもう嫌だと哉斗が泣きそうな顔で言うから、次に俺たちは大富豪を始めた。
「そういえば真理奈ちゃん大富豪知ってる?」
「はい。大体は知ってます。
妹が時々しようって言ってくるので・・・」
「へ~、妹さんいたんだ~」
「はい、まだ小学生なので可愛いです」
「今度会いに行っていい?」
「はい、もちろんです」
なんだか女子同士の会話で、俺たちは話に入りずらかった。
「真理奈ちゃんもやり方をしってるみたいだし、さっそくやろっか!」
手慣れたようにカードをくばっていく柚希。
へー、上手いな。
「はい、くばり終わった」
自分の手元に来た札をめくって見る。
ふーん、まあまあかな。
こうして楽しく四人で大富豪をしていると、時間はあっという間に10時半を回っていた。
「やばっ、そろそろ部屋に戻んないと・・・。
消灯時間だから先生来るよ!」
時計を見て気づいた哉斗が慌てだす。
「そうだな、そろそろ戻ろう」
俺も若干焦っていた。
ここで先生に見つかると残りの旅行はお説教だらけで楽しいなんていったもんじゃない。
最悪の修学旅行になりかねない。
「じゃあな」
そう言って部屋を出ようと足を動かした時、コンコンとノックの音が響いた。
「もう寝てますか?
入りますよ~」
やばいっ!
見回りの先生が来たんだと、瞬時に理解すると俺と哉斗の行動は早かった。
そばにいた二人のどっちかの手を取り、ベッドの中へ一緒にもぐる。
まさかこんな漫画みたいなことが俺にも起きる日が来るとは・・・なんて思いつつ、しっかりと息をひそめる。
驚いた相手も何が起こったのか状況が分からないみたいで、俺の腕の中で静かに息をひそめて固まっていた。
そういえば急いでて誰の腕をつかんだのかあまり覚えてない。
ゆっくりと腕の力をゆるめ、腕の中にいた人物を確認する。
「・・・!」
俺が腕を掴んで抱いていたのはおそらく顔を真っ赤にしているのであろう・・・
柚希だった。
「〇☆×△~♯※~!!」
恥ずかしさで舌が回らないのか、何を言っているかわからなかったが何かを叫んぶように口をパクパクさせていた。
俺は急いで柚希の口を手でふさいだ。
「静かに。先生に気づかれる」
柚希の耳元に小声でいうと、わかったのかピタリと動かなくなった。
そして先生が部屋から出て行ったのを確認してから、俺は布団をまくり上げた。