「あ、俺一番・・・」


Aが見事二枚。


「えぇ、マジか!?」


「空くんが一番か~。
私一番狙ってたのに~」


「すごいですね!」


一番で抜けた俺は残り三人の主部を傍観する。


・・・抜けてるし、別に人の見てもいいよな。


そう思い、俺は隣に座っている哉斗の手札を覗いた。


げっ・・・。


こいつババ持ってやがる・・・。


じゃあ柚希は・・・残り二枚か。


真理奈は残り一枚。


そういえば始める前に柚希が


「負けた人罰ゲームね!」


とか言ってたな。


・・・これは卑怯かもしれないけど、真理奈が罰ゲームになるのは少し可哀想だ。


柚希のことだ。


何をしでかすかわからん。


俺は真理奈の隣にいき、柚希と同じ数字の札を持っているか確かめた。


あ、Jは確か柚希が持っていたはず・・・。


俺は二人に気づかれないように真理奈の耳元で


「右」


と伝えた。


真理奈は最初「え?」という感じで固まっていたけど、意味が理解できたとき小さくこくんとうなずいた。


そして俺が言ったように右の札を手に取る。


「あ、上がった・・・」


小さく言って二枚の札を真ん中に捨てるとそれを見た哉斗と柚希はびっくりしていた。


「え、もう上がったの!?」


「えぇ、まさかの俺対柚希ちゃん!?」


二人は驚きが隠せないようで目を真ん丸にしていた。


そんな二人を見て真理奈とクスクスと笑いあう。


結局この勝負は哉斗の負けで終わった。


「じゃあ罰ゲームねぇ。
何にしよう・・・」


う~んと考えた末に柚希は


「みんなのデコピンを1回づつ受ける!」


とまだ優しいものだった。


「デコピンかー。
あんまり痛くしないでね」


そう言うと哉斗は前髪を上げ、自分のおでこを柚希の前に出した。


「くらえっ!」


ビシッといい音がなる。


「いてっ!」


衝撃をくらった哉斗は痛さに顔をゆがめた。


「次は真理奈ちゃん」


「え、あの、えっと・・・い、いきますね?」


「えいっ!」と本人は精一杯やったんだろうけど、ピチッとさっきよりも弱弱しい音がなった。


「・・・痛くない」


「えぇ!?私思いっきりやったはずなんですけど・・・!」


やっぱり。


「いや、うん。
思ってた通りだったから大丈夫だよ」


何が大丈夫なのかよくわからない。


が、やっぱりみんなが思ってるように真理奈はあまり力がないみたいだ。


「じゃ、最後は空くんね」


「よし、いくぞ哉斗!」


「お、おう!こい!」


男相手に手加減するほど俺は優しくない。


ましてや哉斗だ。


これを思いっきりしてもまず怒られることはないだろう。


・・・たぶん。


「おりゃっ!」


思いっきり力のあます限り強力的なデコピンをおみまいしてやった。


「っ!いってええぇぇぇ!」


予想以上に哉斗は痛がっておでこを押さえながらうずくまった。


「もうちっとさ・・・手加減とかないわけ・・・?」


若干涙目になってる哉斗は俺を見上げながら言う。


「いや、哉斗だからいいかなって・・・」


「なんだよそれ・・・」


怒ったか?


と少し焦りはしたものの、哉斗はスクッと立ち上がって


「次は勝って空にデコピンしてやる!」


などと言ってまたババ抜きを始めだした。


単純と言うか、無邪気と言うか・・・。


真理奈とはまた違った素直さがある。


まぁ、結局この後も哉斗が負け続けて合計12回はデコピンをくらうことになっていたけど・・・。