「…もしもし?」


落ち着け、自分。
あくまで冷静、あくまで、冷静に。

「おー、もしもーし」

この声を聞けるのも、
この電話で最後なんかな?
そう思うと、冷静が途切れそうになる。

「んー?元気ない?」

ほら、心配。
優しい声で心配してくれる優しい君。
いっつも、私が疲れてたり、落ち込んでたりしたら
声で気づいて、すぐ心配してくれた。
思い出させないでよ、ほんと。

「ん、大丈夫。」

あくまで冷静にね。
なるべく明るい声を出してみる。

「そう…?」

「うんっ。あ、今日ね雪降ったんだよ!」

「まじでっ⁈まあ俺んとこじゃ珍しくないけどね〜。つか常に積もってるレベルだし。」

「うちでは珍しーのっ。もうちょっと一緒に喜んでよー!」

「あはは、じゃあ…やったあ〜。」

「嘘下手すぎてイヤだー(笑)」


大丈夫、いつも通りだ。
いつも通り楽しくできて…

「…ねぇ、やっぱ元気ないよな?」

あれ…。

「ん?そんなこと…」
「なくないじゃん?何かあった?」


あーあ、もうダメじゃん。
つか何なの。
めっちゃ好きだわ…。
いみわかんない。
何でバレちゃうの。
何でよ、
今から言わなきゃだめなんだよ、
さよならって。

あーもう言うしかないだろ、これ。



「あーの、ねえ」

「ん?」

あー、この「ん?」ってやつ。
好きだったわー。
このこと話しちゃったら、
もういつものバカみたいな話とか
二度と出来ないんだなー…。

そんな事考えてたら
泣けてきた。
ダメだ…我慢しろ。
あくまで、冷静…。

「………やめよっか、電、わ…」


伝えちゃうと、とうとう
さっき我慢した涙が溢れてしまった。

少しの沈黙があってから

「…泣かんでや。」

って声。
今までで一番に切ない、声。

どうしてって理由を聞いてこないから
彼もわかってんだなって思った。

この関係は、ダメだって。
いつかは終わらせなきゃならない
関係なんだって。