「若菜ずるい!」
隣に座っている女子が小声で言った。
「ケンジ君の顔、ずっと見てたでしょ」
意地悪く言った。
「そんな事ないよ。ホントにどうしたらいいのか分からなかったから・・・。そんな事言ってないでホラ、沙羅!練習練習!」
若菜は返すように言ったが、視線はまだケンジを追っていた。

若菜は、ケンジ・シンに続いてこの楽団に入った。
たまたま、見ていた掲示板でそれを発見して、幼馴染の沙羅を誘って入団した。
若菜と沙羅は姉妹のように育ったので、お互いの考えが手に取るように分かった。

「ケンジ君って外見に似合わず真面目だよね。」
沙羅はさっきよりも小声で言った。

若菜は耳まで赤くして聞こえない振りをした。