石神先生はゆっくりと瞼を閉じる。
その目にはうっすら涙が溜まっていた。
「なんとしてでも、瑠衣を引き取りたいって何度言ったかわからなくなるくらい言ったわ。でも、私が裁判を起こしたときも判決は、親権は稲葉が持つことになった。
それから、私は瑠衣を稲葉に託して教員を続けていた。
今から数年前、この学校に新任としてくる先生の名前を見た時・・・震えが止まらなかった・・・・・。
だってそこには【稲葉 瑠衣】って書かれていたから・・・。
瑠衣がどのように成長しているのか・・・。
元気なのか・・。
私が母親とばれたら、瑠衣は私を嫌うのだろうか・・・。
たくさん考えたわ。もちろん、答えは出なかったけどね。」