「私、石神 優香子はある中学校で理科の教員をしていた時、同じ中学で数学を教えていた稲葉先生の父である稲葉 義樹(イナバ ヨシキ)に会ったわ。
・・・稲葉は数学を教えていたけれど理科にも詳しくて、私にたくさんアドバイスをくれた。
そんなとき、稲葉から【付き合ってくれ。】と申し込まれて・・・・・。それから、進展して結婚、出産までは全てが上手くいってた状態で幸せだったわ・・すごく・・・・・。」


「それから状況が変わったんですか?」


私の問いにゆっくり頷いた石神先生は再び口を開いた。



「私は数年後に教員に戻ったのだけれど、そのとき会ってしまったの・・・昔の恋人だった人に・・・・・。」


「え・・」


「私の昔の恋人は、私が担任していた女の子の父親になっていたわ。彼は妻を亡くし、男手一つで女の子を育てていた。」



そこで石神先生の人生が大きく変わったのか・・・と私はしみじみと感じた。



「彼は女の子の気持ちを知りたいと言っていたの。中学生になって父親に話しづらいこともあるだろうし、娘を傷つけたくないからって理由でね。
それから、彼の相談に頻繁に乗るようになって・・・そしたら、稲葉に浮気しているって誤解されて・・・・・離婚することになったのよ。
私は、瑠衣を・・・瑠衣だけは引き取りたかった・・・・、でも稲葉はそれを許してはくれなかった・・・・・。」