ああ、ムカつく。
なんでもかんでも無理、無理と。…
俺は、隣のソイツを横目で睨んだ。
分かってるよ、俺だって。
この仕事をあと4日で終わらせるなんて、無謀。
最低、1週間だ。
ただ、クライアントもいることだし、途中で放り投げる訳にはいかない。
サポートしてくれた影宮にも頭が上がらなくなるし、とにかく俺は今、やんなきゃならない。
「あ。じゃぁ私、お先でーす」
「ああ、お疲れ様ー」
「お疲れー」
ふと気が付いた頃には、時計の針はもう夜の10時を指していた。
仕事に追われている残業組でさえも、俺を残してどんどんとオフィスから去って行く。
「ふぅー、終わったぁ…」
ただ1人。
俺と一緒に0時までオフィスに残っていたのは、隣の女。
名前は、篠原真紀(シノハラ マキ)。
なんだかんだ言って、入社してからもう5年が経つのだが。…
「…で?今日はどうするの?」
「ああ?」
「もう遅いから、明日にする?」
「…いや、もうすぐ終わるから。ちょっと待ってろ」
「はぁ?なんで私が誘ったのにあんたが命令口調になってるわけ?」
相変わらず、俺たちの関係はずっとこんな調子だ。