だから、どうしてお前はいつもそう機転が回らねぇのって。
言ってやりたかったが、結局諦めた。
相手を説得するより、自分が折れた方が早いことだって、案外ある。
RRRRR…
RR… ガチャッ…
「はい、もしもし。こちら、QURO(キューロ)の…」
『わあ"ぁぁぁー!!!!その声は結城(ユウキ)さんですかぁっ!!??結城さんですよねっ!!??私ですっ、影宮(カゲミヤ)ですっ!!!!』
受話器を上げるなり飛び込んで来た、後輩の声。
そんなに叫ばなくたって、聞こえてるよ。…
「あ、…。うん、影宮。どうしたの?」
『あのですねっ、この前結城さんに頼まれてた資料の件なんですけど、私の担当してるクライアントが少々お急ぎでして…。どなたかに引き継いで貰えるなら、そっちの方がスムーズかと…』
「ああ…」
そう言えばつい先日、影宮に資料のチェックとコピーを任せていたことを思い出した。
いきなり舞い込んだ仕事だったから、俺自身、企画書を作るのに手一杯で、資料のことなど気に掛けている余裕がなかった。
「…そのことなら心配要らないよ。俺ももうすぐ企画書終わるし、なんだったらすぐ応援呼べるし」
『ホントですかっ!!??助かります、ありがとうございます!!!!』
「こちらこそ。忙しいのに無理言ったね。ホントに、ありがとう」
『いえいえ、そんな…。では、今から撮影が始まるので、また』
「うん、了解。お疲れ様」
ガチャッ…。