狐みたいな、切れ目。眉は細くあがり気味で、肌は私よりすべすべなんじゃないかってほど綺麗な小麦色。
黒い無地Tシャツに黒いズボンと、全身黒ずくめの男は、その端正な顔で、茶色い瞳で、私を見つめる。
その瞳が、私に記憶を呼び起こさせた。
見たことある。
というより、懐かしいという感想が正しい。
そうだ、コイツは…
「もしかして、ユタ?」
私は疑いながらも、その名を呼んだ。
すると目を見開いた男。そして、その顔はみるみると緩んでいって、口許に笑みを作った。
「やっぱニーナか?お前戻ってきたんか?」
私の肩に手を乗せて気さくに話し掛けてくるユタ。
その様子をヤンキー達があんぐりと見ていた。
そんなに私とユタが知り合いなのが不思議なのだろうか。
ユタとは幼馴染みだ。
赤ちゃんの時から、保育園で一緒だった。
それこそ一緒に遊んだり、小学校にあがっても一緒に登校したり。
仲良しな友達だった。
結局、私が転校することになってそのまま疎遠になったんだけど。
あの時は泣いてバイバイしたっけ。
「うん、戻ってきたの。それにしても久しぶりだねー、いつぶり?」
私もニコッと笑いかけて、首を傾げる。
「小5くらいじゃねーか?うわ、まじでお前変わってねぇな、このちょんまげもそのまんまじゃん」
ユタはそう言って私のちょんまげを触って懐かしいというように笑った。
それを振り払ってユタを睨む。
「アンタはやっぱりヤンキーになったね、つーかちょんまげはいつもしてませんー。たまたまだし!」
ちょんまげをガードしながら、べーっと舌を出す。
そして私はユタが立っているせいで開いたり閉まったりを繰り返していた自動ドアをくぐり抜けて店内に入った。
店内には店員が二人いて、ユタやヤンキー達に怯えているのかチラチラとこちらを見ていた。
いらっしゃいませ、の声も若干震えていた。
もしかしたら私もヤンキーの仲間だと思われたのかもしれない。