何かを話すわけでもなく、ただ黙ってコンビニに突き進む私を見ている。


その視線の意図は読めない。


ただの好奇の目だとは思うけど。



ひぃぃ~……こっち見ないでぇ~!ていうか何で黙ってるのー!!


目を合わせないように俯きながらヤンキー達の横を通り過ぎる。



よっし!このまま中に入ってしまえば――




「お前ら、酒の他になんかいる?」




――コンビニの自動ドアが私の体に反応する前に、中から出てきた男によって、それは開けられた。


驚いて、俯いていた顔をあげる。




焦げ茶色の髪を後ろに流した男から、ふわりと香る煙草の煙。


一瞬だけ男を視界に捉えた私の後ろからヤンキー達の声が飛び交う。



「クドーさんの奢りっすかー?」
「俺からあげがいい!」
「エロ本!」
「ぎゃははは!いいねーエロ本!」
「頼んだよクドー!」




どうやら目の前で私の行く手を阻むこの男は、ヤンキー達のお仲間らしい。


まぁ、いかにもって感じだけど。



男は私に気付いてないのか気付いているのか、ヤンキー達と会話をしたまま動こうとしない。




「今日は奢ってやるよ、のかわりにお前ら明日から俺の保健室に近付くなよな」

「えーずりぃーよ、あそこは俺の睡眠場所なのによぉ」

「屋上で寝てろカス」

「はーい、分かりましたよーだ」



ヤンキー達も私が困っているのに気付いているはずなのに、男に注意する気配もない。



うわー、もう本当最悪。


怖すぎる。



でも中に入って買う物買って早く家帰りたい。何も買わずに帰ったらそれこそヤンキー達のお笑いネタにされそうだ。


んー……よし。


いくんだ私!!




「あの、すいません、」


小声で目の前の男に声を掛ける。


なるべく目を合わさないよう、男の首辺りに視線を集中させた。



私の声に、ヤンキー達が笑いを止めて、目の前の男がこちらを向いた。



「あの、中に入りたいので少しだけ、横にズレ――」


「……ニーナ?」



え?




名前を呼ばれて、思わず顔が上がる。




男が、私を見ていた。