――帰ってきた、この街に。
深夜1時。
ようやく荷ほどきが終わり、私は部屋のベランダからネオンに輝く街を見渡した。
といってもここは都心から少し離れた場所にあるマンションで、近くにあるといえばコンビニかスーパーマーケットくらい。
大きなショッピングセンターやデパ地下に行くには、電車で20分揺られなきゃいけない。
平日の深夜ともなると車の通りは少なく、マンション下の道路は閑散としている。
点々と蛍光灯があるだけで、まるで誰もいないような錯覚さえ起こしそうだ。
まぁ、私がつい最近まで住んでいた街はここよりも人が少なく、少し駅前から離れれば田んぼと畑しかないようなところだったけど。
そう考えて、空気を吸い込む。
ここは空気が汚い。
でも、そうだ、この感じ。
懐かしい…。
吸い込んだ息を溜めて吐き出す。
夏休みがちょうど明日で終わる。
結局、前の高校で出来た友達とは少ししかいられなかった。
転勤族だから慣れたけど、そろそろ安定した生活を送りたい。
今回は、友達が出来るかどうかさえ怪しい学校だし。
でも家から近いし、学費も私立より安いし、何より私の学力で入れたところだ。
あそこしか行く場所がなかったから仕方ない。
でもなぁ…去年から共学になったってどうなの。
絶対女子少ないよね。
はぁ、とまた溜め息をつく。
そんな暗い気持ちを払拭したくて、私は近くのコンビニでお酒を買って寝ようと思い、こっそり家を抜け出した。