日が暮れる頃には、火は消えていた。
もう、少女の目の前には焼けた木材があるだけ。

この時少女は思った。
(ウチも…ウチも死ぬんかな?)

「…どうなんの?」
そう呟いたとき、少女は背後に人の気配を感じ振り向いた。

「―兄ちゃん…」

少女は顔を向けて言うと、悲しそうな眼をしていた少年が立っていた。

その少年は少女を抱き寄せた。




「―兄ちゃん? あのね、家が無いんよ 皆、いなくなってん…」
少女の表情は無だった。

「ごめん…俺なんも」
「何で? ―兄ちゃんが謝るん どうやったら皆戻ってくるんやろ…」

少女の言葉一つ一つが少年の胸に次々と刺さっていく。すると少女を抱き寄せた手も強くなっていった。

「ウチも皆の所行か…」
少女の言葉は終わらない内に少年の言葉によって遮られてしまった。

「嫌や、逝ったら俺が許さへんよ」

少女はじゃあどうすればええの、と言った。不安そうな声色で。



「安心しぃ…俺がおるから…この先も守るから」


―それはそれは、今は色彩が薄れてしまったある女の子の記憶。