「カイにね、妹がいるかもしれないの――」


とりあえず、海はこの間の男性と同じ月島の出身かもしれないこと、海に妹がいるかもしれないこと、を話した。


「やっぱ彼女より、妹のほうが大事かなぁ……」


愛子はため息をつきながら、小学生相手に本音を漏らす。


「女しだいじゃねぇの? それほど好きじゃないなら、妹とか取るんじゃね?」


子供は残酷だ。見事に、愛子の急所に一撃を加える。フルチンを指摘されたときの、海の気持ちが少しわかった気がした。


「もし、連絡あったら教えてね。携帯だったら、いつ電話くれてもいいから。お願い!」


愛子は一にそう頼み込むと、駅の改札を抜けて行った。



綾辺駅で降り、愛子は家までの道のりをトボトボと歩いた。


「やだ……ここ」


ふと気づくと、小学校の横を通っている。無意識というのは怖い。

七時近くとはいえ、夏場はまだ明るい。まだ、だいじょうぶだよね、と走って通り抜けようとしたときだ。


「みぃつけた!」