ちょっと、いや、かなり残念に思いつつ、肩を落としながら愛子はリビングに入って行った。


「おっ! 大きくなったな~愛ちゃん」

「やめてよ。GWに会ったじゃん。それともわたしが太ったとか言う気?」

「三ヶ月ぶりに会ったんじゃないか、お帰りなさいくらい言ってくれよ」


海が恩師と呼ぶ愛子の父・西園幹彦(にしぞのみきひこ)は、国立大学教育学部の教授だ。五十三歳にしては、見る度に生え際が後退している。

だが、脂ぎった中年親父という感じではない。それは救いだが……十八歳の愛子としては、まだ父と離れていたい年頃ではあった。

しかし、その父が推挙してくれたおかげで、海と出逢えたのだ。それを考えたら、少しは親孝行してもいいか、と言う気にもなってくる。


「ハイハイ。お父さん、お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした。――ねえ、お土産って何?」


愛子はキッチンに立つ母に声を掛ける。


「ママカリの酢漬けと吉備だんごよ。あと、マスカットと白桃を別便で送ってるから、夜には届くんじゃないかしら」


なるほど、早速父が一杯やっている理由がわかった。

吉備だんごは、最初は桃太郎気分で喜んでいたが……転勤十年も経つといい加減飽きてきた。第一、甘い物は女の敵である。


「フルーツが着いたら食べる。吉備だんごはお母さんが学校に持ってけば? あっ、カイ
はもう帰ってる?」

「あっ、愛ちゃん」