海は嬉しそうに、そして、ちょっと困ったように微笑んだ。

それは、あまりに切なくて……。一生忘れられないくらい、愛子の胸に焼き付いた。


「俺ね、愛ちゃんのこと好きだよ」

「なっ! 何言ってんのよ、イキナリ」


唐突に話を変えられ、愛子はどぎまぎする。


「直子さんに誘惑されたときのこと、覚えてる? 愛ちゃんが電話くれたとき」


それは白露に襲われたときだ。

変な言い訳するのが頭に来て鞄でぶん殴ってしまった。


「うん、覚えてるよ。最後まではしてないんだよね? それとも……」

「ないよ。絶対にない! ただ、これまでだったら、最後まで気がつかないはずなんだ。でもあのとき、愛ちゃんの電話で正気に戻った。俺にとって愛ちゃんは特別なんだと思う」

「……それってどういう意味?」


恋の告白……でいいのだろうか?

愛子としては喜んでいいのかどうか、微妙だ。


「なんか、愛ちゃんのことばかり考えるんだ。俺って、きっと愛ちゃんのことが好きなんだと思う。愛ちゃんのおかげで、変な病気も治るかもしれない。ありがとう」


愛子は夜目にも真っ赤だったと思う。

告られるなんて初めての経験だ。なんと答えたらいいのかわからない。