「馬鹿はどっちよ。しっかり逃げられてるんじゃない。しかも、その宝玉まで盗まれてさ」

「盗んだのはその男の指図であろう!」

「なんでカイがそんなことすんのよっ」

「そいつが、獣人族だからだ!」


更に言い返そうとした愛子を横から海が止める。


「あの……なんでそうなるのか、俺の出生が何か関係してるのかな?」


海は愛子を押さえながら、静かに質問した。傷はだいぶよくなっているみたいだ。ひょっとしてこれも宝玉の効果かもしれない。


「朔夜様、私にもお聞かせ願えますか? この男がどうして獣人族になるのか」


蓮の言葉に朔夜は口を開いた。


「明治記念公園で子供を助けた、という記事を見たのだ。それに書いてあった。こやつは二十三年前、瀬戸内の海(うみ)で拾われた捨て子だ、と」

「まさかっ!?」


蓮も驚いている。だが、愛子や海には訳がわからない。


「捨て子だとまずい訳? それとも、あんたたちの島のルールじゃ、捨て子は皆獣人族とか言い出さないわよね?」


愛子の問い掛けに蓮が答え始めた。