「あの……月輪さん。さっき言ったこと、もう一度聞かせてくれるかな。俺が誰の息子か……君が知ってることを教えて欲しい。頼みます」


自分を襲い、大怪我をさせた朔夜に恨み言ひとつ言わず、海は頭を下げた。愛子はもう、開いた口が塞がらない。


だが、朔夜は中空を見つめたまま答えない。

そのとき、蓮が口を開いた。


「我らは瀬戸内にある月島より参った者。あの獣人が狙う宝玉は、我らが命懸けで守り続けた宝。それを奴らに奪われ……」

「ちょっと、ちょっと待って。奴らが奪ったのに、なんで奴らが狙ってる訳?」


愛子は当然の疑問を口にする。


「島には獣人族を寄せ付けない強力な結界が張ってある。奴らは人間のトレジャーハンターを騙して宝玉を盗んだ。だが、その人間は獣人族を出し抜き、宝玉を持って東京に逃げた。そして宝玉を売買しようとして素手で掴み……」


愛子と海はようやく今回の殺人事件の真相を知った。


「あの……ちなみに蓮さんだっけ。あなたとか、その女は獣人族じゃないのよね?」

「馬鹿者! 我らは『月宮天子』様より宝玉を賜ったのだ。大神島に封印された獣人族を逃がさぬよう、その封印を守り続けておるのだぞ!」


獣人族と言われて怒ったのか、朔夜はむきになって愛子に怒鳴り返した。

月宮天子の言葉にドキンとしたが、馬鹿と言われて黙っている愛子ではない。