海は飛び込んできた愛子に抱きつき、そのまま境内に敷かれた砂利の上に押し倒す。そして、上から覆いかぶさった。


どれくらいの時間が経ったのだろう。

ほんの数秒――だが、愛子には数十分にも思えた。


キュイーン――。

それはまるで弦の切れるような音だった。光と光が絡まり、張り詰めた力が引き裂かれ、切断されるかのような。 


愛子の目に映ったのは、蓮が『光剣』を出し、少女……朔夜の光の刃を止めたのだった。


「蓮!? なぜお前が邪魔をする! 奴は獣人族に違いないのだぞ! そやつこそ諸悪の根源。生かしておいてはならぬのだ!」

「朔夜様。『光輪』で肉を抉られ、獣化せぬ獣人がおりましょうか? 殺したあと、徒人(ただびと)であったとなれば、いかがなさいます」


朔夜の口惜しそうに顔を歪める。 


「カイ、カイ、しっかりして。カイーッ!」


愛子は海の名前を必死で呼んだ。

止血できるものを探すが、手元には何もない。仕方なしに手の平を傷に押し当てる。でも、そんなことでどうにかできるレベルではなかった。


「だい……じょうぶ、だよ。愛ちゃんは、怪我してない?」

「馬鹿っ! 人のことより自分でしょ? なんであんたってば」