それは恐ろしく低い声だった。


蓮だ。彼が目覚めたのである。愛子はこのとき、とんでもないミスを犯したことに気が付いた。

昼間、リビングで堂々と海の変身話をしてしまったのだ。そのリビングの隅にある和室で蓮が寝ていることも忘れて。

もし、彼があのときに目覚めていたとしたら?

内緒にしようと決めた海の秘密は、すでにバレていることになる。


「なぜ、宝玉のことを知っている。話せ」


その問いに、蓮が昼間の話を聞いてなかったんだ、とわかり、愛子はホッとした。


「あの……鳥の化け物、白露って言うんでしょ? あの女の仲間でホワイトタイガーになる美少年っていない?」

「流火だ。まだ、ほんの子供だが」

「そう、その流火よ。そいつに襲われたのよ! そのときに、緑の玉が転がって、それが宝玉で『翠玉』だって教えてくれたの。触ったら獣に変化して、長くても三十分くらいで心臓が止まって玉が出て来るって」


蓮は胡散臭そうに愛子を眺めている。


「な、なに? 嘘言ってるとでも思ってる訳?」

「獣人族や、獣に姿を変えた人間に襲われて……なぜ無事なんだ?」

「それは……カイが助けてくれたからよ。ヘン」


シンして……と言おうとして愛子は唾を飲み込んだ。