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ミシッ――深夜、愛子のベッドが軋んだ。

愛子が寝ているのは、普通のシングルベッドだ。十二年前、父の単身赴任が決まる直前に買った年代物である。スプリングは多少イカレて、ギシギシ煩い。

でもひとりで眠る分には、とくに困ることはなかった。


ギギギ……ギシッ。


初めは夢心地で大して気にしてなかった。でも、不意に体が傾いた気がして……愛子は薄っすらと目を開ける。

その瞬間、ドキンとした。誰かが上に覆い被さっている!?


「カ……イ?」


ごく自然にその名を呼び、愛子は期待に胸を膨らませた。


実は母も姉も留守なのだ。そうでなければ蓮を泊めるなんてできない。母は研修会ついでに有休を取り父のもとへ。

姉は、海が途中で自分を放り出し、愛子の許に走ったことを知り……激怒した。

そのまま彼氏のマンションに転がり込んで帰って来ない。愛子にすれば、だったら初めから手を出すな! と言いたいところだ。


十八は初めて経験するのに早い歳じゃない。


愛子がそう思った瞬間――


「声を上げるな。怪我をするぞ」