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一に問題はなかった、と連絡のあった翌日、西園家に来客があった。

香奈と一、そして佐々木警部だ。


三人はリビングのソファに並んで座っている。愛子から冷たい麦茶を出してもらい、三人とも人心地ついたように寛いでいた。

真夏の炎天下に二十分以上歩くのは、年代問わずくたびれるはずだ。今日も暑いですねぇ、とひと通りお天気の話を済ませたとき、不意に香奈が呟いたのだ。   


「本当に、いったいあれはなんだったんでしょうか? どうして……あんな訳のわからない夢を見たのか」


この中で唯一真相を知らない香奈は、見たままを警察に話したのである。



「斉藤先生が、突然パンダになって私達を襲ったんです!」


警察は明らかに、不審な眼差しを香奈に向けた。そして、香奈が必死になればなるほど、今度は不憫そうに見始める。

愛子は困った。

真相は言えない。でも、自分が香奈を変人扱いする訳にもいかない。


「私もパンダに見えました……でも、ひょっとしたら、襲われたショックでそう見えたのかも。ね、きっとそうですよ、香奈先生! 絶対にそうですって!」


香奈は愛子に「ショックでそう見えただけ!」と押し切られ……。