「そんで、その直後にあの女は、いきなり用事思い出したとか言って、帰ったんだ」

「…逃げた…ってこと?」

「おそらくな」


そんな人だったんだ…。

悠さんは、そんな人と…?


「んで、翌日学校で兄貴が女を見つけたんだ。でも、声掛けられなかったんだ」

「…え?」

「母親と同じ財布を持っていたんだ」

「え…そんな…」

「母親の財布、女の好きなブランドのヤツでさ」

「だから取ったの…?」

「それもあると思うけど…。やっぱり金目当てなんじゃないかって」

「……」


私は、何も言えなかった。