愛琉は困っていた。

荷物が重くて歩くスピードが段々遅くなっているのだ。

その為置いていかれている。

待ってくれない翼。

気合いを入れ荷物を持ち直し歩こうとしたら、急に腕が軽くなった。

「持ってあげる」

先を歩いていたはずの男性が横にいた。

愛琉は驚いて自分よりだいぶ高い所にある顔を見た。

「あ、あの…結構ですから…」

おずおず断った愛琉に、男―紅太はニコッと笑った。

「オレがしたいからいいの」

きっぱりとした口調から返してくれないことがわかる。

愛琉は体ごと紅太に向け、

「ありがとうございます」

とほぼ直角に頭を下げた。

「どういたしまして」

紅太は笑みを深め、愛琉の頭を撫でた。