「どこかでお会いしてましたっけ?」
「会ってなきゃ君の存在を認識出来ないじゃないか」
「ではどこで?」
隼人はキレイなウィンクをして微笑んだ
「な・い・しょ」
珠理奈は無表情でカクテルを飲む
「どうして君は俺に笑顔を向けてくれないの?」
「ごちそうさまでした、では他のお客様がいますので」
すたすたと扉の方へ歩く珠理奈
「待って」
腕を掴まれ、後ろを振り向いた瞬間キスをされた
目を見開く珠理奈
しかし、珠理奈の頭は常に冷静だった
さあ、隼人が嫌がりそうな反応はどれかな?
「これでも俺の気持ちわからないの?ホストだからってなめてんの?」
「わかってますよ。隼人様はこの界隈でのNo.1ホストですもの。キスのひとつやふたつどうってことないですよね」
明らかに隼人は傷ついた顔をする
その顔でさえ演技なのではないかと疑ってしまう
「もちろん、ビジネスですよね?私達にはそれ以上もそれ以下もありませんから。」
「珠理奈…。」
「もし、これが本気、だったら、それはホスト失格ですものね。同じ業界の人間です。表には裏がある。真実には嘘がある。常にこの世界は信じられないものばかりです。すでに心得ておいででしょう」
ぶんっと腕を払った
「では、失礼いたします。あ、部屋代をお支払くださいね?」
珠理奈はわざと強く扉を閉めた
私に無断でキスをするなどありえなかった
でもあいつと面影が似てるだけど決定的にあいつと違う
あれから、もう1週間は会っていない