ふっと笑う隼人
珠理奈は少し距離をとり、座り直す
「ねぇ、そのしゃべり方俺、嫌い」
「そうですか」
「知っててやってるよね?」
「さあ」
「ほら、いちいちカチンとくるもん、狙ってんでしょ?」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「あっ、俺がカクテル作ってあげるよ、こっち来て?」
珠理奈の腰に手をまわし、バーカウンターに連れて行く
珠理奈が座った後、カウンターの内側に入り、上着を脱ぐ
「今日の気持ちは?」
「最悪です」
「そっか、俺に会えてそんなに嬉しいか」
隼人は慣れた手つきでカクテルを作っていく
「どうして隼人様は店に来るのですか?」
「ん?君に会いたいから」
「…。私のことはいつ知ったのですか?」
隼人の動きが止まり、珠理奈を見る
「何も…覚えてないんだね」
「えっ?」
「やっと君をみつけたのに」
切ない瞳を手元に戻す
「覚えてないなら思い出すまで通いつめるよ」
そしてシェイクし終わったカクテルを小さいグラスに注ぐ
液体は淡い朱色をしている
「どうぞ」