静かな、街が見渡せる小さな丘にある、小さな公園
星が瞬き、月がくっきりと見える
「話って、なんですか?」
「あっ、はい。あの…私、このドラマが主役初めてで、すごく緊張してて…」
うーん、俺とあなたでダブル主演なんですが、まあそこは置いとくか
「でもっ、能登さんが一緒にいてくれてリラックスして演技出来たんです」
「いや、俺は何もしてないし、」
「私っ、芸能界に入ったのは能登さんに会いたかったからなんですっ。だから、嬉しくて…もし…良かったら…付き合ってくれませんかっ?」
俺のどこが良かったの?
俺の何を知ってて芸能界に入りたいって思った?
そんな甘い考えじゃ、ここではやってけないよ
言ってやりたかった
現実を見ろ
君が思ってるほど、俺はかっこいい人間じゃない
1人の女の子に四苦八苦するような、ただの弱い男だ
「ごめん、俺はあなたの邪魔をしたくない」
「へっ?」
「今、ちょっとずつ仕事が増え出して、ブームに乗ろうとしているあなたを、俺という存在で邪魔したくないんだ。」
「そんなっ、邪魔だなんてっ!!」
「これからお互い仕事がもっと増える。お互いがお互いのことを考えられなくなるよ。ケンカとかして、仕事に支障が出たりしたら相手のことが邪魔になる」
「そんなの、付き合ってみないとわからないじゃないですかっ!」
すでに涙目の彼女
さすが女優、とでも言っておこうか
精々悲劇のヒロインを演じてくれ
あんたの腹のなかなら読めてんだよ
「君を…傷つけたくないんだ」
だから俺も精々優男を演じさせてもらうよ
こんな役なら捨てるほどやってきた
「ごめんっ」
心底傷ついた顔をして、逃げるように彼女の前から去る
彼女は俺と付き合うことでまた仕事を増やし、自分の地位を上らせ、芸能人としての自分を軌道に乗らせたかったのだ
何でわかるかって?
うちには、有能な相棒がいるからさ
裏があるかなと思ってたら、やはりあった
ただそれだけの話
恋愛も全ては仕事のため
そんな人ばかりじゃないってわかってる
わかってるから、自分に寄り付く人がそんな人ばかりで悲しくなるのだ