風呂から上がり、部屋着を着る。

中学生の頃のジャージである。
ごく一般的なジャージで、赤を基調とし、白いラインが肩から流れている。
あのお馴染みのデザインである。


もう少しで腰まで届きそうなほど伸びている髪の毛を後ろでお団子に結ぶ。
黒ぶちメガネをかけて、再びホールへと戻った。


「その格好だとホントにガキだな」

「いいじゃない、可愛らしくて。」


全く酷い言われようである。
ネットでは神として、ちやほやされてきたのに、今のこのぞんざいな扱いといったら…。


サソリが慣れた手付きで紅茶を淹れてくれる。
続いて、キレイにカットしたチーズケーキをモコモコと私の前に出した。


「なんか、商売の話しで悪いけどよ、それ新作なんだ。試食してもらいたい。」

「あれ、サソリはイタリアン料理の店長なんでしょ?なんで、チーズケーキ?」

いつの間にか私も自然体で喋るようになってしまった。


「今度、カフェもプロデュースすることになってよ。」

「へぇっ、すごいじゃん!」
「へへ、それで色んな試作品を試してるんだよ。」

「とりあえず食べましょう。」


「いただきまぁす」


パクっと、一口食べた。
甘さ控えめでべたべたしすぎず、ほどよくベースのタルトがアクセントとしてチーズを引き立てている。


「おいしい…こんなにおいしいの食べるの初めて。」
「本当かっ!?」

「うんうん、これ絶対売れるよっ!」

「うん、前よりかなり良くなってるわ。」


「えっ?前にも食べたの?」

「ああ、これで12回目だな。」

「ええっ!?凄いこだわり!」

「さて、そろそろ自己紹介でもしませんこと?」