んー。
なんというか、カッコつけてしまった。
安藤珠理奈、芸能人相手に翻弄されっぱなしである。
傘、もう一つ持ってる、みたいなことをあれだけ上から言っておいて、実は一つしか持っていないのだ。
まあ、顔が火照っている今の私には丁度良いかな。
さすがにここからタクシーは呼べないだろ。
どんだけ遠いんだよ、家まで。
一歩、歩き出した。
大雨が斜め横から降り注いでくる。
あんな…告白まがいなこと言われてマジになっちゃいかんだろ。
相手を考えろ。
今、売れに売れてる、トップスター、能登春樹だぞっ!
そんな天下のお人が、こんなバーチャルでしか友達いないとかいう、超寂しいオタク野郎にいきなり告白とか…………。
ないだろ、バカーー!!!!!
はあ、危なかった。
もう少しで超イタイ勘違いするところだった。
あれは、ちょっとふてくされた私を気遣って、急にクイズとか出してくれたのよっ!
断じて、コクられた訳じゃないからなっ!安藤珠理奈!
世界の能登春樹ファンにボコられても仕方ないよっ!今の私はっ!
ほんの数分で全身ずぶ濡れになった。
走って駅に向かう。
もうやだ。
久しぶりに心から笑った。さっき別れたばっかりなのに、もう会いたいって思うのはわがままかな?
いや、思うだけなら…良いよね。