マンション近くの広場で撮影することになった。
俺と翼は撮影用のバスで待機中だ。
窓の外を見たら、どこから聞き付けてきたのか、ファン達が群れを成して騒いでいた。


「やっぱ、俺って有名人なんだね。」
「当たり前のことですよ、それがどうしたんですか。」


相変わらずの無表情で言うマネージャーの翼。


「いや、だって。さっきの無反応っぷりを見たら普通へこむでしょ。しかも結構な美人に言われてたらさぁ。」
「安藤珠理奈さんは春樹と同い年ですよ。」

「ふぅん……って、はあああっ!?マジで!お、おお、同い年!同年代に俺の存在を知らない人がいたとは…。さらにへこむ…。」
「無理もないでしょう。」
「何で?」

「それは春樹の頑張りが足りないからです。」
「お前っ…少しは慰めようとか思わないのかっ!この薄情者めっ!」


すると、バスの扉が急に開いた。


「春樹さん、そろそろスタンバイお願いします。」

「あっ、はいっ」


春樹は呼びに来たスタッフに爽やかに返事をすると、翼を睨みバスの外へ出ていった。
そのあとを翼もついていく。


一気にファンのボルテージが上がる。


その時…春樹の目にある物が写った。