「えっ…………。」



驚きで言葉を飲み込めない春樹

そんな春樹に言い含めるように再びじゅりなは言う



「このマンションを出るんだ」


「どうしてっ!!」


「私はもう水商売に戻る気はない。夜の蝶の羽は、春の木にすっかり心を奪われ、もう二度と飛び立つことはないだろう。

だがそうなると、収入源がない。この前、あのクソ親父から借金は返済してもらったが、無駄遣いは出来ない。使えば減るんだ」



じゅりなは春樹の手を握った


「私はお金を大事にしなきゃならない。それを学ばなきゃならない。春樹、私はどうしようもない大人になど、なりたくないんだ」


「じゅりなっ…」



春樹はじゅりなを抱き締めた


「今でも仕事で会えないのが寂しいのに…どうすれば良いんですか?」

「学校でも会ってるだろ」

「学校だとイチャイチャ出来ません」

「まあ、そうだが…」


春樹はじゅりなの顔を見つめる


「じゃあ、一緒に住もう」


「へっ?」


「うん、それが良い、そうしましょう」


「ちょっ、ちょっと待てっ!!」


「どうしたんですか?良いことずくめじゃないですか」


「だって、家賃とか光熱費だけでもどれだけかかるとっ!!私は…」

「全部俺が払います」

「でもっ!!」

「いてくれるだけで良いんですよ、神」


久しぶりのその呼び名に思わず目を反らすじゅりな


「反らさないでください」


春樹はじゅりなの顎を持ち上げて、こちらを向かせる