廊下に出たじゅりなは電話に出た

着信は彼専用の曲

『神のみぞ知る気持ち』


「もしもし」


『じゅりなっ!!無事かっ!?今、どこだっ!!』


「え…」


かなり切羽詰まった能登春樹の声が聞こえた

いつもよりしゃべり方も荒っぽい



「まだ学校の部室だが、どうした」

『ストーカーが翼を刺した』


「っ!!さ、刺したっ、てっ」

『包丁で刺されたらしい、救急車で病院に運ばれた』

「犯人は?」

『わからない、今も逃走中だ』


「そんな…」


『救急車で運ばれるまで翼は携帯で途切れ途切れに犯人のことを教えてくれた。』


「犯人がわかったのっ!?」



『ああ、犯人は』









「私よ」



「っ!?」



声がした方を向くと、乱れた黒髪を揺らして女が近づいて来る
手には包丁を持っていて、服も返り血を浴びて、血だらけになっていた


「は…は…はるき…」


『どうしたっ!?大丈夫かっ!?じゅりなっ!!』


足が震える
今正に目の前に、翼くんを刺した相手がいる
春樹を追い詰めた犯人がいる

いや、間接的に追い詰めたんだ

春樹の大切な人たちを危険にさらした

妹さん、友人、そして翼くん


どこから嗅ぎ付けたんだろう
私と春樹が恋人同士だって


「春樹、」



じゅりなは女をまっすぐ見据えたまま言った


春樹、私の大好きな春樹
こんな女に邪魔されたくないの



「私の大事な春樹を傷つけるやつは、私が退治してあげる」

『えっ………今、そこに…いるのか?犯人がっ』


「いるよ。でも逃げない。逃げたりなんかしない。」



もう脚は震えない

狂ってるって、可笑しいって言われるかも

でも、春樹を守りたいの

好きだから


私が護るの