その歌声が聞こえた瞬間、涼は、ハッとした


なんて自然な最初の入りっ!!

今までも上手かったけど、この曲は何かが違う


涼はマイクを両手で握りしめながら歌うじゅりなを見た



この曲が特別なのか…
マジで俺、この子の犬になるかもしれない…

俺が歌で負けるなんて今までなかった

けど、今回はちょっとヤバいかもな



「♪君はすぐそばにいるのに
優しく頭を撫でることも出来るのに

君の気持ちはどこなの
君は誰を見てるの


僕じゃダメかな

僕は知らない。神のみぞ知る君の気持ち」



まるで俺のことみたいだな

涼はぼんやりとそんなことを思った


もうあと少しで歌が終わる
決着がつく
千夏が好きなのは誰?
すげぇ、知りたい
千夏は誰を見てるの

ねぇ、千夏
俺だけを見ててよ



すると大音量で今歌っているメロディーがどこからか、流れた



今度はじゅりながハッとした


カラオケそっちのけで携帯を取りだし、大きな目をさらに見開く



「じゅりな…ちゃん?」

「すみませんっ!!ちょっとっ!!」


じゅりなはマイクを置き、携帯を握りしめ部屋の外に走って行った


涼はひとり、部屋に残された