三人がソファーの定位置に座ったところで


すでに千波先輩はテレビゲームの世界に入っていた


「朝陽先輩は…」

「ああ、俺も涼でいいよ」


「あ、じゃあ、涼先輩は何でこの部活に入ったんですか?」


「えっ?んん〜、そうだなぁ」


えっ、そんなに悩むの?


「千波が入りたいって言ったからかな」


ここでも千波先輩かっ!! すごいな、千波先輩


当の千波先輩は画面から片時も目を離さない
左手が動いて、うようよとテーブルの上をさ迷う

その手にピンポイントにポッキーを置く涼先輩

さりげなさすぎるっ!!


「でも涼先輩ならもっと他の部活にも入れたんじゃ?」

「ここが一番落ち着くんだ、部室って言っても、実際は俺たちの秘密基地ってかんじで楽しいし」


多分涼先輩なら、ここで千波先輩と2人きりになっても何のアクションも起こさず、千波先輩のお世話をして過ごすのだろう


なんて、紳士なんだ…。



「じゃあ、涼先輩はゲーム得意じゃないんですか?」

「いやぁ、安藤さんの得意ってどの辺かわかんないけど、千波と遊べるほどには上手いかな」


千波先輩もなかなかの腕前だったし、涼先輩もすごいな

でも多分手加減してるな、涼先輩

なんか、そんな気がする


「千波、今日6時から仕事だろ?」


「あ…」


何故涼先輩が千波先輩の仕事のスケジュールを知っているんだっ!!


「そうだった…」


千波先輩はいそいそと帰る準備をして、最後にポッキーの箱を持った


「これ、もらっていい?」


すでに掴んでいるのに、涼先輩に上目遣いで確認


「もちろん、いいよ」


爽やかに微笑む涼先輩

千波先輩は一瞬を目を見張り、さっと視線を外した


「ありがと。また、明日ね」

「うん、気をつけてね。」


「神もお疲れ様でした。では私は先を急ぎますので」


ぺこりと頭を下げ、スタスタと歩いていった


千波先輩がいなくなったところで、私は言った


「先輩、勝負しましょう」