昼休み


「春樹、どこ行ったんだろ」

ちょっと目を離した隙にどこかへ行ってしまった


「せっかく春樹の分のお弁当作って来たのに…」


屋上に行ったが、鍵がかかっていて入れなかった

仕方ない、今日は天気が良いし、中庭で食べよう

この私立朝陽高校は敷地面積がバカ広い
中庭は青々と茂っている芝生があり、ベンチや噴水などがある

じゅりなは噴水が眺めて、尚且つ大きな木の下にあるベンチを見つけた
そこへ近づいていくと…


「春樹くんっ」


声がした


見ると、春樹が女の子に向かって少し早足で歩いて来ていた


2人は大きな木の側に向かい合って立っている


じゅりなは咄嗟に、その木の影に隠れた


「今日、一緒にお弁当食べない?あたし、春樹くんのお弁当も頑張って作って来たんだ」

「すみません、もう先約があるので、受けとれません」


「あたしと付き合うって話、考えてくれた?もうあたし、春樹くんしか見えないの。」


その人は春樹の腕に手を絡ませ、胸を押し付ける


「あたし、春樹くんの為なら脱いでもいいわ」


な、なな、なんという場面に出くわしてしまったんだっ!?私はああああっ!!

能登春樹がめちゃくちゃ誘惑されてるじゃないかっ!!
デレデレしてたら殺すっ!!
と、思ってちらりと春樹の顔を見た


!!!


そこには、何も感情がない目があった


「すみません、俺、仕事が恋人なんで、先輩とは付き合えません」


よく言った!!仕事人間っ!!
じゅりなは小さくガッツポーズをした


すると、女の人の声がスッと冷たいものに変わった



「あたしとあんたが付き合ってるって噂が流れたら、2人とももっと人気が上がるのよ?おいしい話じゃない?どうしてノってくれないの?」


そういう裏があったのかああっ!!
恐るべし業界人っ



「俺は先輩を利用したくないですし、先輩に俺を利用されたくありません」


「キレイごとね。」


「そこまでする理由がわかりません」

「ふっ、すでに売れてるあんたにはわかんないでしょうね、この焦りも、惨めさも」

「だったら、尚更ご自分を大事になさってください。多分、料理の方面に手を伸ばせば、先輩の個性が生かされるんじゃないですか?」


「///何よ、それ。」



「俺のただの勘です、では待たせてる人がいるのでこれで失礼します」


春樹はスタスタと校舎の方に歩いていった