兄よりもたくましく、賢い妹に叱咤激励され、勇気を持った春樹
回想シーンから、現在に戻ろう
車内は依然ピリピリしていた
「今日も学校に行くのは反対だったんです。あなたと仲が良いと思われた人がどうなることか…」
「遥香を襲った犯人は、まだ捕まらないの?」
「残念ながら、防犯カメラも無い閑静な住宅街での出来事でしたので」
その時、翼の携帯の着信が鳴った
路肩に車を寄せ、電話に出る
「はい……はい……わかりました…春樹にもそう伝えておきます」
通話を切り、車内はしばし緊張と静寂が訪れる
口を開いたのは春樹だった
「どうしたの」
「今、警察から電話があって…」
翼はゆっくりと後部座席の春樹を振り返った
「春樹の地元の友人が事故で重体だそうです」
「っ!?だっ…誰…?」
翼が告げた名前は小学校からの幼なじみの名前だった
血の気が引いてく気がした
その日の仕事は、何をどうやってしたのかはっきり覚えていない
ただただ、無心にこなしていった