「千波、」


「ん?」


千波、と呼ばれた彼女はポッキーをくわえて、ゲーム機を構えたまま振り返った
振り返るとき、同時にポニーテールが揺れた


「今、忙しいんだけど」

「ゲームしてるだけじゃん」

「…誰よ、その子。部外者入れないでよね」

「千波っ」


彼女たしなめるように言う涼


「ごめん、あいつは俺と同じ三年の渡會千波(わたらいちなみ)、無愛想だけど、まあ、あれだ、人見知りが激しくて、虚勢張っちゃうだけなんだ。わりぃな」


涼先輩は困ったように笑って、彼女をいとおしそうに見た


「私、この部活、入ります」

「えっ?」

「おおっ!!」

「…」

びっくりする春樹と歓迎する涼、黙々とゲームをする千波


「それは嬉しいなぁ、うちの部活、今んとこ俺と千波と春樹の3人しかいないからさ。助かるよ」

「え、そんなに少ないんですかっ!?」


「ああ…。なんか人気ないんだよなぁ」


そりゃ、こんな美形3人がいりゃ入りづらいだろうよ
しかもその1人が理事長のご子息とあっちゃ、下手に手出し出来ないし


「まあ、適当に座ってよ。今、なんか出すわ。コーヒーと紅茶と麦茶と緑茶と烏龍茶と…」


「どんだけあるんですかっ!!」

「だって、いつでも誰でも歓迎出来るようにって、色々用意してるんだもん」


「じゃあ、2人ともブラックコーヒーで」

「オーケー、ちょっと待ってて」


涼は奥にあるキッチンに向かう

ここ、住めるな


じゅりなは春樹を見上げた

私がブラックコーヒー好きなの知ってたのかな?


「ん?どうしました?」

「はっ///いやっ、別にっ。て、手伝わなくていいのかな、と思って」

「そんなに気張るほどの人じゃないですよ」


「ちょっと、あんたら」


すると、千波からの鋭い声が飛んでくる


「は、はいっ」


あの先輩こわっ


「いつまでつったってんのよ。」

「あ、はい」


春樹たちはとりあえず千波が1人で独占してるソファーの隣のソファーに、2人並んで座った


テーブルには、ドラマの台本が二冊と、マンガが何巻か乱雑に散らかっており、さらにひどいのは、お菓子のゴミが散乱していることだった


「ごめんね〜、散らかってて」


涼が慣れた手つきでさっさとゴミを片付けていく


「ん、涼、ポッキーなくなった」


「ああ、今、持ってくるよ。極細のやつ?」

「うん」


「ハイハイ」