キーコ、キーコ…
少し錆びた音を上げながら、ゆっくり自転車が進む
校舎から離れ、森の中の小道を抜けていく
「本当に敷地が広いな」
5分ほどこいでいくと、古い建物が見えてきた
「こちらの旧校舎は生徒数が爆発的に増えたことによって、教室の数が足りなくなり、使われなくなったそうです」
「木造だな、ここの歴史はそんなに長いのか?」
「ええ、そのようですね。」
木造二階建てのその旧校舎は趣があり、横長のつくりをしていた
チャリを降りて、校舎の中に入る
「ここは土足オーケーなんですよ、こっちです」
下駄箱を通って、右に曲がって三つ目の教室
「昔は会議室だったみたいで、広いんですよ。こんにちはー」
春樹は教室の扉を開けて、中に入って行く
「おおっ!!はるきぃ!!久しぶりじゃーん!!元気してたかよっ」
中に入るなり、背の高い人が春樹を出迎えた
2人は仲良さそうにハイタッチをしている
他にも教室では、大型テレビや、ソファー、テーブル等、普通の教室ではあり得ない物が揃っていた
しかし、人は、背の高い彼ともう1人、テレビゲームを熱心にやっている彼女しかいなかった
「おっ?どうした?まさか、彼女?」
「えっ?」
「ち、違いますよっ///」
ポカンとしたじゅりなとはうって変わって、あわてふためく春樹
何よ、慌てちゃってさ
そんなに全力で否定しなくてもいいでしょ
「なんだ、つまんねぇの。俺は、三年の朝陽涼(あさひりょう)よろしくな」
「あ、二年の安藤珠理奈です。…朝陽?」
なんか聞いたことある名前だなぁ
「ああ、俺、ここの学校の創立者の末裔なんだ。だから、今の理事長の息子」
「ああ、そうなんですかぁ」
なるほど、このモヤモヤはそれだったのか
どうりで聞いたことあるわけだ
「反応うすっ!!珍しいねぇ、普通もっとなんかあんのに」
「こういう人なんですよ」
「なんで春樹が言うんだよぉ」
「あの、そちらの方は…」
「ああ、」