五時間目、数学
「この問題を、間宮、解いてくれ」
「はい」
間宮さんは緩慢な動きで黒板まで行ったかと思うと、チョークを持った瞬間、
カッ、カカッ、ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ…
美しい数字と筆記体の羅列が次々と高速で書かれていく
黒板を埋め尽くすほどの式を書き、見事答えを導き出した間宮さん
チョークを置くとまたゆったりとした動作に戻った
「先生、いかがかしら」
間宮さんが髪を払いながら数学教師に問う
「正解だ、素晴らしいよ。間宮」
間宮さんの頭を微笑みながら撫でる先生
「ありがとうございます」
間宮さんは心なしか嬉しそうに撫でれてから、席についた
「次は、安藤、」
「はいっ」
どうしよう…と思っていると…
ツンツンと肩をつつかれた
振り向くと能登春樹がノートを差し出していた
「どうぞ」
いつもなら、そんなのいらんっ!!
と、突っぱねるところなのだが、
「悪いな」
「いえ」
ノートを受け取り、黒板へ向かった
負けず嫌いな私だが、人の好意を無駄にするわけにはいくまい
というのは体裁で、単純に私が問題を解けない、と勘違いして、能登春樹がすかさず助け船を出してくれたことが嬉しかったのだ
「正解だ」
私は正解でもなでなでは無いらしい
よかった、少々潔癖だから、触られたらどうしようと思ってひやひやしていたのだが…
あれは間宮さんオンリーみたいだ