四時間目、古典


「古典ってあたし大好きっ」

嘉穂が後ろを振り返り言う

「へぇ、何か意外だね」

「え〜、どこが意外なのよっ!古典だけはいつもテストの点数良いんだからっ」

「ホントに古典だけはな」

「うっ!遠矢は黙っててっ!」


ぷーっと頬を膨らませて遠矢を睨むが、全く効果はない

睨んでいるが可愛いので破壊力がゼロに近いのだ
むしろ可愛さの破壊力はあるのだが


古典は百人一首をやることになった

グループに分かれてかるたの枚数を競いあう

私のグループは私、嘉穂、間宮さん、遠矢、そして能登春樹である


「負けないからねっ」

いつのまにか自慢のネイルをとっていて、短く細い爪が見える嘉穂


「楽しめばいいじゃん」


遠矢は本気モードの嘉穂とは正反対にやる気ゼロである
むしろ、そんな嘉穂を見て、楽しんでいる


間宮さんは涼しい顔で立っているのみ
かと思えば他のグループの女子にちょっかいを出しに行っていたりと、かるたをする気がない


「俺も本気を出すから、泣くなよ、かほりん」


能登春樹は完全にゲームだと思って本気を出すらしい

私?
私は…



カセットテープから百人一首を読む声が聞こえた


『あ…』


その瞬間、一陣の風が吹いた


いや、じゅりなの手が、腕がかるたを素早く飛ばしたから吹いた風である

飛んでいったかるたを呆然と見送る皆
じゅりな1人が普通に飛んだかるたを拾って、戻って来る


ヤバい、ガチで強い人いるぅぅうう!!!!


皆が焦った瞬間だった


なんか…皆の視線がイタイ

そのなかでも能登春樹の視線がうざい


さすがっ神っ!

という視線をビンビンに浴びながら次々とかるたをとったじゅりな


最終的にじゅりなが85枚
春樹が14枚、嘉穂は1枚であった



「じゅりぴょんのばぁぁかぁ」


そのあと嘉穂が泣いたのは言うまでもない