職員室で挨拶をして、いよいよクラスに行く
二年S組
この私立朝陽高校は普通科と芸術科に分かれている
校舎も敷地内には一緒にあるが、建物自体は別々にあるのだ
私は普通科のはずだったのだが…
「どうして私も芸術科なんですかっ!?別に私、アイドルとか歌手とか目指してませんっ!!」
理事長はそこらへんの俳優よりもイケメンな、50代のダンディーなお方だった
「自分で言うのもなんだけど、私は人の才能を見抜く才能があってね。君は芸術科に行くべきだと判断させてもらった」
「勝手なことしないでくださいっ」
「君は気が強いね〜、大人相手に一歩も引かない」
「話を反らさないでください」
「それに頭も良い、そうそういない逸材だと私は思うがね」
「ですからっ…」
「君の素性は知ってるんだよ」
「っ!?」
「どっかの国で療養してたなんて嘘だろ。肌がきれいすぎるからね。いや、独特の成分で荒れた形跡はあるね…酒…かな?」
さっと血の気が引いた
退学されられる…
そう思った
けど
「私は君が我が高校に入学してくれたことを感謝するよ」
「…へ…」
「過去はどうあれ、君はもうここの生徒だ。じっくり楽しみなさい。芸術科でね」
半ば脅しに近いな…これ
過去をバラされたくなかったら芸術科へ行け
この理事長はそう言っている
「…わかりました。よろしくお願いします」
こうして私は芸術科に行くことになった
今思えば、ここが分岐点だったのだろう
もし、普通科に行っていれば今の私はなかった
きっとまた同じ選択を迫られても、また芸術科に行くだろう
この先、何が起こっても…。
どんなに…今が…