どうする?

と、目で上を見上げると、すでに不機嫌面の翔太

先客がいるので少し待つみたいだ


それにしても何で英語でしゃべってるんだろう
男の人の英語、少しなまってるし
もしかしてイギリス人?


「この前のフランス公演もお見事でした。あなたはそのあとあるお店に行っていますね?」

「ええ、行き付けの店ですわ。それが何か」

「フランス公演の時は必ずそのお店に行ってますが、」

「気にいってるんです、」

「もしかしてそこのシェフとお付き合いされてます?」

『!!!』


これにはじゅりなも翔太も驚いた
すでに嗅ぎ付けている人がいるとは

記者の人かな?


この場合、恋人だって認めた方が良いのかな?


「困るなぁ、萌花さんは僕のものなのに〜」


その言葉に翔太の額に青筋がピキィっと音をたてそうなくらいくっきり浮き上がる


「僕が何年あなたのファンでいると思っているんですか?僕はね、あなたの夫になるべく、日々努力をして、やっと少しは世間に認められるピアニストになったんですよ。まあ、あなたには遠く及ばない地位ですけどね」


「毎回言っているはずですが、わたくしにはあなたの妻になる気は毛頭ありません。それに今は彼氏持ちです。」

「な、なんだってっ!!か、彼氏っ!?」

「そうです。ですから、今後一切わたくしには近づかないでください。」


「ふざけるなぁぁ!!!!」


ガターンと、椅子が倒れる音がした


「僕がどれだけっ」


男が罵詈雑言を吐こうとしたその時、翔太はすでに動いていた



「黙れ」



翔太は部屋に入り、男の目を見て、一言いった

地を這うように低く、背筋が凍るほど凍てついた声

こんなサソリの声…初めて…


「二度と萌花の前に現れるな。二度とだ。次はないと思え」


それは死刑を意味する言葉のように男に重くのしかかった

男は声も出ず、ただただ、首をガクガク上下に動かし、逃げるように出ていった