「拒絶っ…。」


驚いた


そんなことが…ありえるのか…。
大好きな人をたった一度のケガで大嫌いになるなんて…。

でもありえるんだ

だって私は隼人様に嫌悪感を感じていたから。
初めて会ったときから。


「だから…俺は君の目の前から姿を消した。ホント君って酷いよね?散々面倒見た相手を忘れた挙げ句、拒絶するなんて。君の治療費俺が肩代わりしてあげたのにさっ」


ぷいっとそっぽを向いて拗ねる隼人
そんな仕草もさまになっている


「な、なんと言って良いやら…ホントすみません…。」


すっかり縮こまってしまった珠理奈を見て諦めたように微笑む隼人
そしてあの時のように珠理奈の頭を撫でた


「ごめん。君のせいじゃないって頭ではわかってるんだけどね。あの頃と俺の見た目とか、職業とか変わっちゃっるし」


「そうですよっ!!コックにはならなかったんですか?」


「あはは、君は本当に小さかったからね。わからないのも無理ないか。料理はただの趣味だよ。本当は学者だからね、」


「えっ!?だ、だってコックの見習いだったんじゃ…」

「それはまあ、君が勝手に思い込んでいただけさ。とにかく料理を頻繁におすそわけする言い訳が欲しかったんだ。君を…出来る限り、助けてあげたかったんだ」


今さらながら自分が色んな人たちから支えられていたことに気づく


「学者って…」


「うん、学者もお金が無いと研究出来ないからね。一時期の資金繰りのつもりだよ。まあ、たまたまNo.1ホストとかになっちゃっただけさ」


さらっとうざいことを言って笑う隼人様


「どうして、もっと早く言ってくれなかったんですか?そしたらっ…」


あんな…酷いことしなかったのにっ!!


「だって俺は君にお兄ちゃん、としてではなく、1人の男として見てもらいたかったから」


「…。」


「でももう良いんだ。君が思い出してくれただけで嬉しいよ。それじゃもう行くね。俺も暇じゃないんで。じゃ。」


ソファーから立ち上がる隼人


「あ、あのっ…!」


「ん?」


隼人が珠理奈を見下ろした

「…その…今更おこがましいかもしれないけど…」


手をもじもじと絡ませる珠理奈


「お兄ちゃんって…呼んでもいい?」


隼人は目をぱちくりした後ふっと微笑んだ
その笑みはすでにお兄ちゃんのそれだった


「良いに決まってるでしょ?」


「うんっ!!」


隼人は失恋と共に、妹を手に入れたのだった