「やめるよ…ホステス。」
こうして私のホステス人生は幕を閉じた
それから、突然の退職にどこから噂を嗅ぎ付けたのか、次々と昔のお客や常連が駆けつけてきた
「寂しいなぁ、君と会えなくなるなんて、お祝いにドンペリ100本頼むよ」
今日も懲りずに口説きに来る隼人様にも別れを告げる
「寂しくなったらいつでも俺の店に来てくれて良いんだよ?君なら大歓迎さ。それともホテルとかでも良いよ?むしろそっちの方が…」
「隼人様、セクハラで訴えますよ。」
「やだなぁ、そんなつもりで言ったんじゃないのに」
いつもニコニコ笑顔の隼人様、しかしスッと真顔になった
「本当に辛いことがあったら言うんだよ?話すだけでも楽になるっていうし。俺じゃなくても、誰かに相談するんだ。絶対に1人で抱え込んではいけないよ。わかった?」
「…は、はい。」
本当に心配してくれてるんだ…。
実はいい人?
気づくとまたへらっと笑顔に戻っていた
「あの…以前にも聞きましたが」
「ん?」
隼人様はサラサラの金髪を長い指ですく
「どうして私なんですか?どこかでお会いしたんですか?私がホステスになる前にっ」
「……んー。」
珍しく困った顔をみせる隼人様
「本当に君は何も覚えてないんだね。無理もないか、君は今を生きるのに精一杯だったし、俺も昔と随分違うからね」
その言葉に首を傾げる珠理奈
「俺は君がお母さんと一緒に暮らしていたアパートの隣の部屋の住人だよ」
「………あああっっ!!」
「やっと思い出してくれた?」
「コックのお兄ちゃんっ!!」
「その呼び方は恥ずかしいなぁ」