「入学祝いだよっ、メールで知らせてくれたでしょ?だから制服届けに来たんだ」

「わざわざ良いのに」

「良いって、それに…今日は珠理奈の退職祝いも兼ねてるしね」


制服の入った紙袋を珠理奈に渡す春樹


「私やめないから」

「どうして?」

「私はここが好きだから。ここが私の居場所だからよ。」


真剣な顔で私の話しを聞いてくれる春樹


「学校側にバレたら、せっかく入れたらのに退学になっちゃうよ」

「うん」


「本気にわかってるの?」


春樹の声が低くなる
こんな声は初めてで…少し怖くて、春樹じゃないみたいだ


「好きってだけじゃ、世間ではやっていけないんだよ。」


その言葉は重く私の心に突き刺さった
芸能界で戦っている春樹には人一倍世間の厳しさや苦しさや怖さ、そういったものがわかるのだろう


「社会のルールだ、珠理奈。未成年は飲酒禁止。こういうところでの労働も禁止なんだよ。」

「わかってる、でも私の生活もかかってるの」

「じゃあ、あんなマンションに住まなければ良い。グッズもフィギュアもゲームもマンガも全部売れば良い。」


「やめてよっ!私はここにいたいのっ!」

「学校にも行きたいのに?」
「っ…。」


「俺から学校に行こうって誘っといて悪いけどさ、わがままもいい加減にしなよ。」